Journal — N-BRIDGE BLOG| 生成AI業務活用
社内プロンプト集はどう作るか。個人の工夫を会社の資産に変える手順。
2026.10.27
「あの人はChatGPTをうまく使うけれど、自分はいまひとつ」。
同じ会社で同じAIが使えるのに、社員によって成果に差がつく。
生成AIを導入した会社で、まず起きるのがこの現象です。
結論から書くと、この差を埋める現実的な方法が、社内プロンプト集です。
うまくいった頼み方(プロンプト)を会社の置き場に集めて、誰でも真似できるようにします。
ただし、作り方にはコツがあります。
立派なツールを入れることでも、全員に提出させることでもありません。
置き場は4列の表で十分。
集め方は「書かせる」のではなく「拾い上げる」。
この記事では、なぜ個人任せのままだと差が開き続けるのかをデータで確認したうえで、筆者が支援の現場で実際に提案している作り方と続け方を説明します。
筆者(永松裕章)は大阪でAI研修とAX支援の会社を経営し、中小企業のAI活用を伴走型で支援しています。
同じAIなのに、人によって成果が違う理由。

パーソル総合研究所が2026年2月に公表した「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2025年10月実施、本調査は正社員3,000名)によると、仕事で生成AIを使っている就業者は32.4%でした(出典:パーソル総合研究所の調査リリース)。
タスク単位で見た業務時間の削減は平均16.7%。
ところが、実際に全体の業務時間が減った人は、利用者の約4人に1人(25.4%)にとどまります。
使えば必ず速くなる、という単純な話ではないわけです。
この調査で注目したいのは、使いこなしている人とそうでない人の差の中身です。
利用が成熟している層は、そうでない層に比べて、使う用途の幅が約2倍、削減できた時間は約2.3倍に達していました(出典:MONOist「生成AIで業務の時短効果が見込めるも、実際に業務時間が減少した人は約25%」)。
つまり差を生んでいるのは、才能や文章力ではなく、「AIにどんな仕事を、どう頼めるか」という引き出しの数です。
引き出しの数なら、増やせます。
うまい人の頼み方を会社に残して、ほかの人が真似できるようにすればいい。
それが社内プロンプト集の役割です。
「各自で工夫して」のままでは、工夫は個人の中に埋まる。

プロンプト集を作ろうとした会社から、「社員に提出をお願いしたが、集まらなかった」という話をよく聞きます。
集まらないのには、はっきりした理由があります。
① うまい人ほど、提出する時間がない。
AIをうまく使う社員は、たいてい仕事が集中している人でもあります。
自分の業務が速くなった分は次の仕事で埋まり、「共有のために書き出す」作業は後回しになります。
② 本人は、特別な工夫だと思っていない。
使いこなしている人にとって、自分の頼み方は当たり前の手順です。
「これは共有する価値がある」と本人が気づいていないので、提出のお願いだけでは出てきません。
③ プロンプトの文面だけ集めても、他人は使えない。
仮に文面が集まっても、「どんな場面で」「何を貼り付けて」使うのかが分からなければ、他の人は再現できません。
文面と一緒に、使いどころの説明が要ります。
提出制がうまくいかないのは、社員の意欲の問題ではなく、集め方の設計の問題です。
では、どう設計すればいいか。
置き場は、4列の表で十分。

まず置き場から決めます。
といっても、専用ツールは要りません。
スプレッドシートか、すでに社内で使っているNotionのような置き場に、次の4列の表を1枚作るだけです。
- 用途(どんな場面で使うか)
- プロンプト本文(そのまま貼り付けられる文面)
- 作った人(詳しく聞きたいときの相手)
- 使用例(実際に使った場面と結果)
筆者が支援先に提案しているのも、この形です。
検索機能や評価ボタンの付いた立派な仕組みは、管理する人の負担が増えて、かえって続かなくなります。
4列で物足りなくなったら、そのときに育てればいい。
最初から凝らないことが、続ける条件です。
なお、置き場を作る前に、会社として使ってよいAIサービスと入れてはいけない情報だけは決めておきます。
このあたりはシャドーAIを禁止で終わらせない管理の作り方で詳しく書いています。
集め方は「拾い上げ」。月1回の共有会で続ける。

置き場ができたら、集め方です。
提出を待つのではなく、こちらから拾いに行きます。
① うまくいった例を、仕事の会話から拾う。
「その資料、早かったね。どうやったの」という日常の会話が入り口です。
聞き取った頼み方を、聞いた側が4列の表に書き込みます。
本人に書かせない。
ここが提出制との一番の違いです。
② 月1回、ベストプロンプトを紹介する場を作る。
集めた中から数件を選んで、月1回の会議の冒頭10分で紹介します。
「経理の月次チェックがこの頼み方で30分縮んだ」のように、業務と結果のセットで見せると、別の部署の人も自分の仕事に置き換えて考え始めます。
筆者はある支援先で、営業成績が突出した社員のやり方を会社の仕組みに残す取り組みを提案しました。
個人の頼み方を表に残し、共有の場で紹介する。
この2つがそろって初めて、工夫が個人の外に出ていきます。
③ 使われなかった行は、消す。
表は増やすだけでは育ちません。
使用例の列がいつまでも空いている行は、実際には使われていないということなので、思い切って消します。
筆者の会社でも、記事作成や営業管理をAIに任せるための指示文を台帳として残し、直すたびに上書きする運用を続けています。
書きっぱなしの文面は数か月で古くなるので、「使われているものだけが残る」状態を保つことが、信頼できるプロンプト集の条件だと感じています。
プロンプト集は、AIを前提に仕事を組み立て直す入り口になる。

4列の表と月1回の共有会。
ここまでなら、来月から始められます。
そして、プロンプト集はそれ自体がゴールではありません。
表が埋まってくると、「この業務は毎回同じ頼み方をしている」という行が見えてきます。
毎回同じなら、人がプロンプトを打つのをやめて、仕組みに任せる候補になります。
つまりプロンプト集は、AIを前提に仕事の組み立てを見直していく取り組み(AX)の、最初の見取り図にもなるわけです。
社員のAI知識がまだばらついている段階なら、まず全員の土台をそろえる研修から入るのが近道です。
N-BRIDGEのAI研修は、ツールの操作を教えて終わりではなく、実際に抱えている課題をAIでどう解決できるかを示すところまでを扱います。
ベテランの判断や経験をAIに残していく進め方は、属人化と暗黙知のAI活用で。
一部の人だけの活用を全社に広げる設計は、AI活用の浸透の設計で詳しく書いています。
自社ならどこから手を付けるべきかを知りたい方は、無料のAI活用診断をご利用ください。
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