Journal — N-BRIDGE BLOG| AX(業務のAI移譲)
社内マニュアル・手順書はAIと作る。書ける人がいない会社の進め方。
2026.09.11
社内にマニュアルや手順書がほとんどなく、仕事のやり方はその人の頭の中にだけある。
思い当たる会社は多いはずです。
先に結論を書きます。
- マニュアルが無いのは社員の怠慢ではなく、書ける人と書く時間が無いことが原因です
- だから「誰かが頑張って書く」という前提をやめて、AIに書かせる形に変えます
- 人がやることは2つだけ。AIの質問に話して答えることと、できた下書きを直すことです
筆者(永松裕章)は大阪でAI活用支援の会社を経営しています。
外部で支援している現場でも、このAIが聞き役になる方法で、ベテランの知識を文書に起こす設計をしてきました。
その経験も交えて、順に説明します。
マニュアルが無いのは、書ける人がいないから

まず、マニュアルが無いことは珍しい状態ではありません。
株式会社スタディストが2026年2月に実施した調査(現場業務に関わる経営者・役員、管理職、従業員1,233名が対象)では、従業員300名未満の企業でも58.0%が、特定の人にしかできない属人的な業務があると回答しています。
また、マニュアルや手順が整わず「どう動けばいいか分からない」状態を経験した人は、300名未満の企業で42.1%、300名以上の企業では57.7%でした。
(出典:スタディスト調査・PR TIMES)
同じ調査で、経営者・役員層が属人化への対策を進められない理由として挙げた上位は、次の3つです。
- 予算・コストの制約(29.3%)
- 人材不足(28.0%)
- 効果的な対策方法が分からない(25.0%)
要するに、マニュアルを書けるだけの人手も時間も無い、というのが多くの会社の実態です。
だとすれば必要なのは、書ける人を探すことではありません。
書ける人がいなくても文書ができあがる仕組みのほうです。
「書いておいてください」と頼むと、なぜ止まるのか

マニュアル整備を思い立ったとき、多くの会社はまず本人に頼みます。
あなたの仕事のやり方を、文書にまとめておいてください、と。
筆者の経験では、この頼み方はほぼ確実に止まります。
理由は3つあります。
① 書く作業そのものが重い
日々の業務をこなしながら、まとまった文章を書く時間を確保するのは簡単ではありません。
書き慣れていない人にとって、白紙から文書を起こす負担はさらに大きくなります。
② 何を書けばいいか、本人にも分からない
長年やってきた仕事ほど、本人にとっては当たり前になっています。
どこが他の人に伝わらないポイントなのか、自分では判断がつきません。
③ 日常業務がいつも優先される
マニュアル作成には締め切りがありません。
目の前の仕事と並べば、後回しになるのが自然です。
これは本人を責める話ではありません。
本人が書くという前提そのものに無理がある、と考えたほうが実態に合っています。
順番を逆にする。AIが質問し、人は話して答える

そこで、書く工程をAIに渡します。
流れは次のとおりです。
- AIが聞き役になり、業務について1問ずつ質問する
- 本人は、話し言葉のまま口頭で答える
- AIが答えを整理して、マニュアルの下書きに起こす
なぜこの順番だと進むのか。
書くことに比べて、質問に口頭で答えることは日常会話の延長だからです。
タイピングが苦手でも、文章の組み立てが苦手でも、話すことならできます。
筆者が外部で支援しているある会社では、ベテラン社員が持つ「これは危ない」と気づく判断のポイントを、この方法で引き出してチェックリストに起こす設計をしました。
本人は一度も文書を書いていません。
AIの質問に、話して答えただけです。
若手が先輩に何度も聞きに行くのは気が引けるものですが、AIが相手ならその遠慮は要りません。
聞かれる側も、同じ説明を毎回繰り返す負担から解放されます。
なお、属人化の全体像とほどき方の順序は、ベテランの暗黙知をAIで引き出す。属人化解消を進める順序と落とし穴で詳しく書いています。
本記事はその実践編にあたります。
進め方は3つ。業務を選び、話して、直す

明日から試せる形に落とすと、次の3つになります。
① 業務をひとつだけ選ぶ
全業務のマニュアル化から入ると、量に圧倒されて止まります。
最初は、新しく入った人が必ずつまずく業務か、その人が休むと止まる業務をひとつ選びます。
② AIに質問させ、話して答える
ChatGPTなどの生成AIに「◯◯という業務のマニュアルを作りたいので、必要なことを1問ずつ質問してください」と伝えます。
あとは音声入力で答えていくだけです。
30分ほどの会話でも、下書きの土台になる材料は集まると考えられます。
③ できた下書きを、本人が直す
AIがまとめた下書きを本人が読み、違うところだけを直します。
ゼロから書くのと、できたものを直すのとでは、負担がまったく違います。
このとき実際の事例や数字をひとつ添えておくと、読む側がそのまま使えるマニュアルになります。
作って終わりにしない。更新はAIの得意分野

マニュアルは、作った瞬間から古くなり始めます。
やり方が変わったら、変わった点をAIに伝えて直させる。
この更新の軽さこそ、AIと作る一番の利点だと筆者は考えています。
続けるうえでの注意点はひとつです。
知識を出す側のベテランが、自分の仕事が奪われると感じると協力は止まります。
この取り組みは同じ説明を何度も繰り返す負担からの解放であって、その人の価値を置き換えるものではない。
そう先に伝えておくことが大切です。
そして、この進め方が回るかどうかは、社員が生成AIの基本操作に慣れているかどうかで変わります。
N-BRIDGEのAI研修は、マニュアル整備のような自社が実際に抱えている課題を題材に、AIエージェントで何が解決できるかを示すところから始めます。
研修はゴールではなく、社員のAI知識をつけるAXの最初の一歩という位置づけです。
詳しくはAI研修のご案内をご覧ください。
マニュアルが無いことは、裏を返せば、これから文書になる知識が社内に眠っているということでもあります。
書ける人を待つのではなく、話せる人とAIの組み合わせから始めてみてください。
どの業務から手を付けるか迷う場合は、AI活用診断で現状を整理するところから始められます。
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