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Journal — N-BRIDGE BLOGAX(業務のAI移譲)

人手不足対策にAIは使えるか。中小企業が採用より先に業務を減らす順番

2026.08.12

求人を出しても応募が来ない、来ても定着しない。

そんな状態が何年も続いている会社は、決して珍しくありません。

先に結論を書きます。

人手不足への打ち手を「人を増やす」だけに絞るのは、データを見る限り分が悪くなっています。

現実的なのは、採用を続けながら、AIで業務の量そのものを減らしていく方法です。

ただし、一人分の仕事を丸ごとAIに置き換えようとすると、ほとんどの場合行き詰まります。

業務の中から時間を食っている部分を切り出して任せる、という順番が必要です。

この記事では、その根拠になる数字と、筆者が自分の会社で実際にやっている方法を紹介します。

「採用で埋める」という前提が、崩れつつある

夕方の小さな作業場に残された、誰も座っていない作業台

まず、人手不足の現在地を数字で確認します。

帝国データバンクの調査(2026年1月)によると、正社員が不足していると感じる企業は52.3%で、1月時点としては4年連続で半数を超えました。

業種別ではさらに高く、次のような水準です。

  • 建設業:69.6%
  • 情報サービス業:69.2%

不足が採用で埋まらないまま続くと、行き着く先は事業の縮小や停止です。

同じく帝国データバンクの倒産集計では、2026年上半期の倒産5,335件のうち、従業員の退職や採用難などによる「人手不足倒産」は227件で、上半期として過去最多を更新しました。

前年同期からは12.4%の増加です。

ここから言えるのは、「いい人が採れれば解決する」という前提そのものが、業種によっては成立しにくくなっているということです。

半数の企業が同時に人を探している市場で、自社だけが採用で勝ち続けるのは簡単ではありません。

採用は続けるとしても、それと並行して、そもそも必要な作業量を減らす打ち手を持っておく必要があります。

AIが進まない一番の理由は、技術ではなく「業務のイメージ」

曇りガラス越しにぼんやりと見えるオフィスの光

では、作業量を減らす手段としてAIは現実的なのでしょうか。

企業が導入をためらう理由を見ると、意外なことが分かります。

中小企業白書2026によると、AIを活用していない企業が挙げた理由の1位は「活用する業務がイメージできていない」で、63.4%にのぼります。

セキュリティへの不安(14.5%)や予算の確保(13.8%)を大きく引き離しての1位です。

つまり、多くの会社で止まっているのは技術や費用の問題ではなく、自社のどの仕事に使えるのかが分からない、という手前の段階です。

逆に言えば、業務のイメージさえ持てれば、最初の壁は越えられるということでもあります。

次の章から、そのイメージの持ち方を具体的にします。

「一人分」を置き換えようとしない。業務の一部を切り出す

小さな部品をトレーに仕分けている作業の俯瞰

業務のイメージを持つときに、まず外したい考え方があります。

辞めた人の穴や、採れない一人分の仕事を、AIで丸ごと置き換えようとすることです。

求人票に書かれる「一人分の仕事」は、実際には性質の違う業務の束です。

電話対応もあれば書類作成もあり、判断も、人との調整も混ざっています。

その束を丸ごと引き受けられるAIは、現時点では存在しないと考えたほうが安全です。

現実的なのは、束をほどいて、AIが得意な部分だけを切り出すことです。

切り出しやすい業務には、次の3つの特徴があります。

① 型が決まっている

見積書や報告書の下書き、議事録の要約、データの転記のように、毎回ほぼ同じ形式で繰り返す作業です。

型がある作業は、AIに例を見せるだけで再現できることが多い領域です。

② 判断の基準を言葉にできる

問い合わせの振り分けや書類の一次チェックのように、「こういう場合はこう扱う」と説明できる判断です。

人に引き継げる基準は、AIにも引き継げます。

③ 仕上がりを人が確認してから使う

AIの出力をそのまま外に出すのではなく、下書きとして受け取り、人が確認して仕上げる前提の業務です。

この形にしておけば、AIの間違いは確認の段階で止まります。

この3つに当てはまる作業は、事務でも営業でも製造でも、たいていの会社の中に埋まっています。

1日30分の作業でも、毎日続けば年間で120時間を超える計算です。

筆者の会社では、記事制作と営業管理をAIに任せている

ノートパソコンの画面を確認しながらメモを取る手元

抽象的な話に聞こえないよう、筆者自身の例を書きます。

筆者が経営するN-BRIDGEでは、営業管理とコンテンツ制作の2つの領域で、AIエージェントを日常的に使っています。

たとえばこのブログの記事は、テーマの候補出しから下書きの作成までをAIエージェントが行い、人は事実の確認と公開の判断だけを行う運用にしています。

書く時間はほぼなくなりましたが、公開するかどうかの判断は必ず人に残しています。

営業の面では、商談の記録を整理して次にやるべきことを洗い出す作業をAIに任せ、人の時間は商談そのものに使うようにしました。

どちらにも共通するのは、AIに渡したのは「作る」作業で、人に残したのは「決める」作業だという点です。

この線引きを守っている限り、AIの間違いが致命傷になることはありません。

人を増やさずに業務の範囲を広げられているのは、この分担によるものです。

最初の一歩は、ツール選びではなく業務の棚卸し

ホワイトボードを囲んで話し合う社内の小さな勉強会

ここまでの話を、自社で始めるときの順番に直します。

① 業務を書き出す

誰がどの業務に、どれくらいの時間を使っているかを書き出します。

正確な集計である必要はなく、主な業務と、かかっているおおよその時間が見えれば十分です。

この棚卸しをせずにツールの比較から入ると、先ほどの「業務がイメージできていない63.4%」と同じ場所で止まります。

② 1つ選んで、小さく試す

書き出した業務の中から、前の章の3つの特徴に当てはまるものを1つ選び、「下書きはAI、確認は人」の形で数週間試します。

うまくいかなければ対象の業務を変えればよく、この段階で失うものはほとんどありません。

③ 試せる人を増やすために、社員に基礎知識をつける

試す段階でつまずきやすいのは、AIの操作そのものよりも、何をどこまで任せてよいかの判断です。

N-BRIDGEのAI研修では、受講する会社が実際に抱えている課題を題材に、AIエージェントで何がどこまで解決できるかを示すところから始めています。

研修はゴールではなく、業務を変えていくための最初の一歩という位置づけです。

内容はAI研修のページに、研修が「受けて終わり」にならないための設計はこちらの記事にまとめています。


人手不足は、待っていれば好転する種類の課題ではなくなりつつあります。

一方で、業務の量を減らす技術は、この1〜2年で実用の水準に届きました。

差は一度に開くのではなく、小さな切り出しの積み重ねで生まれていきます。

自社のどの業務がAIに向いているかを整理したい場合は、無料のAI活用診断をご利用ください。

執筆:永松裕章(N-BRIDGE株式会社)

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