Journal — N-BRIDGE BLOG| 生成AI業務活用
ExcelとスプレッドシートのAI活用。集計・分析・関数づくりの実際。
2026.10.09
毎月の集計、売上表の整形、関数の調べもの。
Excelやスプレッドシートの作業は、生成AIに任せやすい業務の代表格です。
先に結論を書きます。
- 関数やマクロが書けなくても、AIに日本語で頼めば式や手順が返ってきます
- 集計や分析は、ファイルごとAIに渡して日本語で頼むのがいちばん簡単です
- ただしAIの答えは、根拠の式まで開示させて人が確かめる前提で使います
筆者(永松裕章)は大阪でAI活用支援の会社を経営しています。
自社の営業管理をスプレッドシートの台帳とAIの組み合わせで回しており、研修でも表計算のAI活用を扱ってきました。
この記事では、その実務で使っている手順を、道具の選び方から確かめ方まで順番に説明します。
道具は3つ。いま使っている環境の中から選ぶ

表計算のAI活用というと、新しいツールの導入を想像するかもしれません。
実際には、いま使っている環境の中にすでに入り口があります。
① Excelの中で使う
Microsoft 365には、Excelの画面の中で使えるAIアシスタントのCopilotが用意されています(公式の案内ページ)。
開いているシートに対して、そのまま頼めるのが利点です。
② Googleスプレッドシートの中で使う
Google Workspaceにも同じ位置づけでGeminiが用意されています(公式の紹介ページ)。
社内がGoogle中心なら、こちらが入り口になります。
③ チャットAIにファイルを渡す
契約しているAIがどちらも無い場合や、追加費用をかけたくない場合は、普段のチャットAIにファイルを渡す方法があります。
たとえばChatGPTは、.xlsx や .csv などのファイルをアップロードして、集計・表の作成・グラフ化・傾向の説明まで頼めます(OpenAI公式ヘルプ)。
他の主要なチャットAIにも、同様の機能を持つものがあります。
どれが正解ということはありません。
社員が毎日開いている画面に近いものを選ぶと、定着しやすくなります。
関数づくりは「日本語で頼む」に変わる

いちばん手軽で、効果がすぐ出るのが関数づくりです。
VLOOKUPとINDEXのどちらを使うべきか。
条件が2つあるときの集計はどう書くのか。
こうした調べものに、これまでは検索と試行錯誤で時間を使っていました。
AIには、やりたいことをそのまま日本語で頼みます。
- 「A列の日付が今月の行だけ、C列の金額を合計する式を作って」
- 「この式が何をしているか、順番に説明して」
- 「この式がエラーになる原因を教えて」
式を組む仕事が、出てきた式を確かめる仕事に変わります。
白状すると、筆者も関数をほとんど暗記していません。
それでも台帳の集計や抽出で困らないのは、式づくりをAIに任せて、自分は結果の確認に回っているからです。
2つめの「式の説明」は、地味に効きます。
前任者が組んだ複雑な式が残っていて、怖くて触れないシートは、どの会社にもあります。
式を貼り付けて説明させれば、何をしているシートなのかが分かり、直す判断ができるようになります。
集計・分析はファイルごと渡して頼む

関数の次は、集計と分析です。
ここでのコツは、セルや式の単位で考えず、ファイルごと渡してしまうことです。
売上の一覧、商談の記録、アンケートの回答。
一覧の形になったデータなら、渡して日本語で頼むだけで集計が返ってきます。
- 「月別・担当者別の売上を集計表にして」
- 「先月と比べて大きく動いた項目を挙げて」
- 「この回答を不満の種類ごとに分類して件数を出して」
筆者の会社では、商談の記録をスプレッドシートの台帳に集めていて、「今月の商談件数を前月と比べて」「対応が止まっている案件を挙げて」といった集計や抽出はAIに頼んでいます。
集計用のシートをあらかじめ作り込んでおく必要がなくなるので、見たい切り口をその場で変えられるのが実務では効きます。
渡す前の準備は、難しくありません。
先ほどのOpenAI公式ヘルプでも、分析に向いた表の条件として次の点が挙げられています。
- 1行目に分かりやすい列見出しを付ける
- 1行に1件のデータを入れる
- 1つのシートに関係のない複数の表を入れない
逆に言うと、この条件を満たさない表は、AIでもうまく集計できません。
そこで次の話につながります。
集計の前に、表を「集計できる形」に整える

集計に時間がかかっている会社の多くは、集計の作業ではなく、その手前でつまずいています。
部署ごとに報告の書き方が違う。
同じ項目なのに呼び方がバラバラで、並べても比べられない。
この状態では、人が集計してもAIが集計しても、まず形をそろえる作業が発生します。
実はこの「そろえる」作業こそ、AIの得意分野です。
筆者は研修のカリキュラムを設計する際、部門ごとに日報の仕組みを作って持ち帰る演習を組み込んでいます。
流れは次の4段です。
① 項目を決める
作業内容・人数・進捗・課題など、全員が必ず書く項目を先に決めます。
ここだけは人が話し合って決める部分です。
② AIに整えさせる
現場の走り書きや箇条書きを渡して、決めた項目の形に整えさせます。
書く側の負担を増やさずに、形がそろい始めます。
③ AIに確かめさせる
記載漏れや、前日までの内容との食い違いをAIに指摘させます。
④ AIに集計させる
1週間分の日報から、週報の下書きと進捗の集計を出させます。
日報を例にしましたが、営業報告でも検査記録でも型は同じです。
項目をそろえる→整える→確かめる→集計する、という順番にすると、毎週の集計資料づくりの大部分をAIに任せられるようになります。
注意点。AIの答えは根拠まで開示させて確かめる

ここまで任せる話を書いてきましたが、最後に逆側の話をします。
AIの集計やレビューの結果は、そのまま信じてはいけません。
筆者が外部で関与したある現場で、契約内容をまとめた比較表をAIにレビューさせたことがあります。
AIは「同じ数字が2回計上されている」と誤りを断定し、修正案まで出してきました。
ところが、合計セルの式を確認させると、その表は行の使い分けを意図して設計された正しい表でした。
AIは見た目の数字の並びだけを見て、実際にどのセルが合計に使われているかを確かめずに指摘していたのです。
もうひとつ、別の落とし穴もあります。
列の名前と中身の単位が食い違っていた表では、値そのものは一貫しているため、AIはどれだけ見ても異常に気づけませんでした。
おかしいと気づいたのは、実際の現場の広さの感覚を知っている人間のほうでした。
この経験から、筆者はAIに表を扱わせるとき、次を運用ルールにしています。
- 指摘や集計結果には、根拠にした式・参照範囲・計算過程を必ず開示させる
- 合計値などの要の数字は、元データ側でも検算する
- 最後に、現場を知る人の感覚と突き合わせる
AIに書類を作らせたあとの確かめ方は、提案書をAIにレビューさせる話でも書きました。
任せる範囲を広げるほど、確かめる手順を決めておくことが効いてきます。
集計を任せると、次が見えてくる
Excelやスプレッドシートの作業は、毎日のように発生して、やり方がある程度決まっています。
だからこそAIに任せたときの時間の戻りが分かりやすく、社内で最初に成果を見せる題材に向いています。
そして集計を任せられるようになると、その先が見えてきます。
日報から週報へ、台帳から経営の報告へ。
データを人が手で運び直していた場面を、順番にAIへ渡していけます。
メール対応のAI活用と同じで、場面を区切って一つずつ任せていくのが近道です。
N-BRIDGEでは、自社の業務を題材に手を動かすAI研修で、表計算のAI活用も扱っています。
自社のどの業務から手を付けるべきか知りたい方は、AI活用診断からお気軽にどうぞ。
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