学歴社会は続くのか?――教育の話を、社会構造から問い直す|N-BRIDGE STUDIO EP2【N-BRIDGE RADIO #6】
前編では、AIの進化や仕事の変化を手がかりに、
「学歴社会はこれからも続くのか?」という問いを置きました。
ただ、対談の中で見えてきたのは、
「続く/続かない」を決めにいくよりも先に、
学歴が“何に使われているか”が変わり始めているということでした。
そして後半は、そこから視点を少し下ろします。
社会の話を、教育の話へ。
制度の話を、目の前の子どもの話へ。
今の子どもたちは、よく「素直だ」と言われます。
でもその素直さは、本当に“考えたうえでの素直さ”なのか。
それとも、怒られないために身につけた反応なのか。
この違いは、学校や塾の中だけで決まるものではありません。
家庭での会話、注意のされ方、見守られ方——
日々の関わりの積み重ねが、そのまま出てしまう。
後編では、祝原さんが現場で見ている子どもたちの姿を入り口に、
「いま何が起きているのか」
「親として何ができるのか」
そして、学歴がこれから“どこで効くのか”まで話を進めていきます。
本記事では、その後半部分をもとに、
対談の流れを整理しながらお届けします。
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「素直」=“納得している”ではない

hiroto:「今の子どもって、素直ですよね。そこが一番変わったって感じですか?」
祝原さん:「大きく変わったのはその点。素直さですね。
でも、なぜ素直になっているかというと……“防御策”なんです。」
ポイントはここです。
素直=理解して動いている、ではない。
“言われた通りやっていれば怒られない”を先に覚えてしまう。
祝原さんはそれを「免罪符を手に入れてる」と表現していました。
やる理由を考える前に、怒られない動きを選ぶ。
言葉を“そのまま”受け取る子が増えている
祝原さんが出した例えが、かなり分かりやすい。
「『お風呂見といてな』って言って、ずっと見てる。お風呂が溢れてても見続ける。
『いや違うやん』って言ったら
『お風呂見てって言われたから。怒られる筋合いない』」
笑える話に見えますが、ここで起きているのは、
- 言葉の奥(“溢れそうなら止める”)を読まない
- その場で判断して動かない
- 代わりに「言われた通り」を盾にする
ということです。
hirotoも「会議で使うからコピー取っといて」というと1枚だけ出てくるみたいな話を挟んでいました。
「何枚取るとは聞いてないので」と返ってくる。
子どもだけの話ではなく、職場でも見かける現象だ、という温度感です。
注意された回数が少ないと、注意そのものが怖くなる

次に出てきたのが「打たれ弱さ」。
「怒られ慣れしてないので非常に打たれ弱い。
1回言われると『なんでそんなこと言われなあかんの』ってなる。
『僕たちは注意されるのが怖いんですよ』って言う子もいた。」
ここで大事なのは、性格の話にしないこと。
祝原さんが言っていたのはシンプルに “注意される回数” の話です。
注意される回数が少ない → 注意が怖い → 余計に「怒られない動き」だけ選ぶ。
こういう循環に入りやすい。
「叱ったらダメ」の空気が、大人側も“言葉どおり”にしてしまう
祝原さんは、話を子どもだけに閉じませんでした。
「教育のまずいところって、
『叱ってはいけない』っていう、よく分からないルールを
大人も形だけ守ろうとしてること。」
パワハラという言葉が怖いから、
“やってはいけないこと”だけを避ける。
でも、その場に合わせた言い方や、理由の説明が減る。
結果として、子ども側も
「言葉どおりにやっとけばいい」
「相手が喜ぶ答えを返せばいい」
を強めてしまう、という指摘でした。
伸びる子は伸びる。でも差がつきやすい

hiroto:「逆に、良くなってるところってありますか?
頭いい子は、すごく頭いいなって感じることがあって。」
祝原さん:「邪魔されることが少なくなった分、
自由な発想でどんどん伸びていく子はいます。
ただ、それは家庭環境が大きい。」
ここは後半の大きな山でした。
昔は、近所の大人や先生が口を出す場面があった。
今はそれが減った。
だから家で放っておくと、ズレたまま進みやすい。
逆に家で見てもらえる子は、伸びやすい。
家庭でやることは「会話」。小学校〜中学前半が勝負
祝原さんが一貫して言っていたのは、これです。
「対話が一番大事。
話して、意見を言う、聞く。お互いが聞き合う。」
そして、年齢の目安も具体的でした。
「10歳〜12歳、ゆっくりな子で14歳ぐらいまでは、
対話で“認められてる”と感じていく。」
面白いのは、守り方も“やりすぎない”ところまで話が進むこと。
「危ない時は手助けする。
でも保護しすぎてるところには『もういいですよ』って本人に言う。」
“ずっと守る”ではなく、
“見て、必要な時だけ手を出す”。
塾で子どもを見ている人の言い方でした。
二極化を分けるのは「叱り方」だった

hiroto:「本当に素直な子と、表面だけの子が二極化してる感じがする。」
祝原さん:「原因は叱り方ですね。
理由をつけて分からせてるのか、
それとも『はい』って言わせるために叱ってるのか。」
「はい」と言わせる叱り方をすると、
子どもは“理解”に向かわない。
“正解当て”に向かう。
祝原さん自身の体験も交えて、
「大人がいい顔をする答え」を探す話が出てきます。
伝える側が苦労する。「聞く力」が落ちている
もう一つ、現場のリアルとして語られたのがこれです。
「国語力、聞く力がすごく弱い。
どれだけ噛み砕いて言っても伝わらない。
主語述語が分からない。」
だから祝原さんは、ホワイトボードで図を描く。
言葉だけだと抜けるところを、図で埋める。
こういう“教え方の工夫”も、後半の見どころでした。
大学は「就職のため」だけで行く場所じゃない

後半の後ろ半分は「大学に行く意味」に入ります。
「大学って、いかんでええで。
大学は教育・研究の機関やから。
就職したいんだったら就職学校行け。」
刺激の強い言い方ですが、言いたいことは明確です。
- “偏差値が高いから”だけで行くと、こなすだけになりやすい
- 行くなら「やりたいこと」を軸に使う
- そもそも別ルート(専門など)もある
夢の探し方も具体的で、
「お金は欲しい?」「一人で死にたい?」みたいに、近い問いから入っていました。
学歴が効く場面は「人との関係」

学歴の話は、否定でも肯定でもなく、使いどころの整理でした。
「学歴はどこで通用するかって言ったら対人で通用する。
モノに対しては学力が意味が出てくる。」
hirotoも、ビジネスの場で
「学歴があると得する場面がある」
「強い人につながりやすい」
という体感を話していました。
さらに祝原さんは、こう締めます。
「学歴を見ることはなくならないと思う。
でも学歴フィルターは減っていく。AIが測定してくれるので。」
保護者に伝えたいのは「情報より、わが子を見る」

終盤は保護者へのメッセージ。
「情報収集に終始して、
成功例を持ってきて自分の子に当てはめる。
これすると大体失敗します。」
代わりにやることは、わが子を見ること。
- 反抗に見えて、甘えたいだけの時もある
- 自由にしたいのか、方向を示してほしいのか
- 思春期はうまく話せないから、行動から聞く
そして最後に、言いづらい話も言う。
「味方になる=何でも味方、ではない。
あかんとこはあかんって言えるのも保護者。
嫌われても血のつながりは変わらない。」
学歴は“バッジ”ではなく、結果として付いてくる

最後に祝原さんが置いた言葉は、学歴の見え方をまっすぐに戻してくれました。
努力や興味が先にあって、
「ここで学びたい」「この人たちと出会いたい」が先にある。
学歴は、その結果として“あとから付いてくるもの”だ、と。
前編では、社会や仕事の側が学歴をどう扱ってきたか、
そしてそれがどう変わり始めているかでした。
後編で見えたのは、子どもたちの「素直さ」や「打たれ弱さ」が、家庭での会話や注意のされ方とつながっているという現実です。
学歴社会が続くかどうか。
その問いの前に、私たちが向き合うべきことがある。
怒られないための“正解”を探すのではなく、
自分の言葉で考えて、選べるようにすること。
そのための会話を、日常に戻していくこと。
学歴は、人生を決めるものではありません。
でも、人生を広げる場面があるのも事実です。
だからこそ、名札を追いかけるより先に、中身を育てる。
この順番だけは、変えないほうがいい。
前編とあわせて、ぜひ聴いてみてください。
この対談が、あなたの気づきにつながれば嬉しいです。
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